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更新日:2024年8月5日

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取手市男女共同参画推進条例の解説

前文

日本国憲法は、個人の尊重と法の下の平等を定め、性別によって差別をしてはならないことをうたっている。これを踏まえ、取手市は、男女がお互いの人権を尊重し、認め合い、お互いに協力し合う(1)男女共同参画社会の実現に向けた基本計画を県内でもいち早く策定し、施策の推進に向けて様々な取組みをしてきた。特に、(2)子育て支援についての取り組みは、早くから推進してきたが、多様な生き方が可能になる社会の達成には、依然として解決すべき多くの課題が残されている。

取手市は、(3)首都圏近郊都市として、世帯数の増加傾向もみられるが、特に、核家族の割合が高いという特徴もあり、出産や子育てを期に仕事を断念する女性も少なくない。また、(4)男性の遠距離通勤・長時間労働等によって、(5)家事・育児・介護等の家庭生活への参画が充分にはできていない。(6)性別による固定的な役割分担意識やそれに基づく社会的慣行も根強く残っており、真の男女共同参画社会の実現には、なお一層の努力が求められる。

今後、(7)少子高齢化、国際化、情報社会の急速な進展により家庭・地域・社会が大きく変化していく中で、全ての市民が安心して暮らし、そして、取手市の地域の特性を生かした男女共同参画社会の実現に向け、全ての人が平等で生き生きと暮らすことができる活力ある取手を築くために、市、市民及び事業者が一体となった取組みを推進するためにこの条例を制定する。

趣旨・解説

前文は法律の規定ではないので、直接の法的効果はありませんが各条項の解釈の基準をしめすものです。条例の趣旨・目的・基本原則を明記することで、取手市民一人一人に基本理念の理解と、男女共同参画の推進の重要性の理解を求めるものです。
(憲法や基本法、基本条例に多くみられます)

目的

第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関する基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって男女共同参画社会を実現することを目的とする。

趣旨

男女共同参画社会を実現するために、行政のみならず市を構成するすべての主体が、どのように取り組んでいくべきか、という基本的な方針を示すことを、この条例の目的としています。

解説

「施策の基本となる事項」とは、本条例第2章に規定する事項をさします。

「総合的・計画的に推進」とは、市においては、18条・第3章に規定する推進体制をさします。

「総合的」とは基本法に準じた施策が、市・市民・事業者が全体として促すことをいいます。「計画的」とは、基本計画の実施施策がその中心となる、ということです。

定義

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  1. 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的および文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うことをいう。
  2. 積極的改善措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため、必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
  3. 性別 生物学的な性別及び社会的又は文化的に形成された性別をいう。
  4. 性別等 性別、性自認(自己の性別についての認識をいう。)及び性的指向(自己の恋愛又は性愛の対象となる性別についての指向をいう。)をいう。
  5. ドメスティック・バイオレンス 配偶者、交際相手等の親密な関係にある者又は当該関係にあった者に対する身体的、性的、心理的、社会的又は、経済的暴力をいう。
  6. セクシュアル・ハラスメント 性的な言動による相手方の生活環境を害し、又は性的な言動に対する相手方の対応によって不利益を与えることをいう。
  7. 事業者 市内において事業を行う個人および法人その他の団体をいう。

趣旨

本条は、今まで一般的にあまり使われていなかった言葉や、重要で基本的な概念をあらわしている言葉の意味を説明しています。

解説

  • 「男女共同参画…自らの意思によって」
    「活動へ参画する」のはあくまで「自らの意思」に基づくもので強制によるものではありません。
  • 活動に参画する機会が確保され
    「参画」とは参加ではなく意思決定の過程に加わることをさしています。能力・意欲のあるなしに係らず機会の確保ではありません。
  • 男女が均等に政治的、経済的、社会的、文化的利益を享受することができ
    男女という性別によって、利益に差がでるのではなく、個人の能力に応じて、均等に参画する機会の確保によって利益をうけとることができる、ということです。
  • 共に責任を担う
    性別によって責任の担いかたに違いがでるのではなく、対等な関係で共に責任を担う、ということです。
  • 積極的改善措置
    必要な範囲内において、男女いずれか一方に対し、あらゆる活動に参画する機会を積極的に提供することをいいます。
  • 性別
    生物学的性別と、社会的・文化的に形成されたジェンダーのこと(男らしさ、女らしさ、男性像、女性像など)をいいます。
  • 性別等
    性別(性別学的性別と社会的・文化的に形成された性別)に加え、自己の性別についての認識である「性自認」や自己の恋愛や性愛の対象となる性別についての指向である「性的指向」のことを含めて、この条例では「性別等」と表します。多様な性のあり方に対応するため、令和4年に条例を改正した際に、第3項の「性別」とこの「性別等」を定義として新設しました。
  • ドメスティック・バイオレンス
    配偶者間・パートナーや恋人間の親密な関係(過去にそのような関係にあった場合も含まれます)において、殴る蹴るの身体への暴力や、言葉の暴力、生活費を渡さない、外出を制限するなどの暴力をさします。社会的地位などから来る差別が、女性を低く見る意識の要因となり暴力などの人権上の問題となっています。さらに近年は若年層におけるデートDVが顕在化し、問題となっています。
  • セクシュアル・ハラスメント
    継続的な人間関係において優位な力関係を背景に、相手が望まない性的言動によって、労働条件の不利益を受けたり、就業する上で見過ごすことの出来ないほどに就業環境が害されることをいいます。社会的地位などから来る差別が、女性を低く見る意識の要因となり人権上の問題となっています。
  • 事業者
    市内において事業を行う個人および法人その他の団体をさします。法人その他の団体とは、営利法人(企業など)非営利法人(公益法人・農業協同組合・労働組合等)、その他任意団体(ボランティア団体・互助会・PTA等)のこと。

基本理念

第3条

  1. 男女共同参画の推進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人としての能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されるよう行われなければならない。
  2. 男女共同参画の推進は、社会における制度又は慣行が、男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り配慮し、男女が性別による固定的な役割分担にとらわれることなく多様な生き方を選択することができるよう配慮されなければならない。
  3. 男女共同参画の推進は、男女が社会の対等な構成員として、市の政策又は事業者における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されよう行わなければならない。
  4. 男女共同参画の推進は、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育,家族の介護その他の社会生活における活動についてその役割を円滑に果たし、かつ、家庭生活以外の活動を行うことができるよう配慮しなければならない。
  5. 男女共同参画の推進は、国際的な理解及び協力の下に、行なわれなければならない。

要旨

本条例第1条(目的)の「基本理念を定め」の規定を受けてのものです。基本法第9条の、「地方公共団体は国の基本理念にのっとった施策の実施の責務」を受けての規定になります。

取手市の男女共同参画社会の形成のための基本理念を5つ定めました。これらの理念は、第4条から6条までの市・市民・事業者の責務を果たす上での基本となる考え方になります。

第1項

男女共同参画社会とは「男女が、そのお互いの人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、その個性と能力を充分に発揮できる社会」と規定しています。男女の人権の尊重は、男女共同参画社会の根底をなすものであり、人権の尊重をなくして男女が個性と能力を発揮していくことはできない、としています。取手市においても、同様の社会の取り組みをめざします。

第2項

現在の社会における制度や慣行の中には、男女を問わず、個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにもかかわらず、「男は仕事、女は家庭」「男は主要な業務、女は補助的業務」というように、性別による固定的な役割分担意識の下に形成されたものもあります。結果として、就労活動、地域活動の選択をしにくくするような偏った影響を与える恐れがあります。男女が多様な生き方を、選択できるよう配慮されることをめざします。

個人が何を「男らしさ・女らしさ」と考えるのかに関与するものではありませんが、「男らしさ・女らしさ」をパターン化し強調し過ぎることで、性別による固定的な役割分担意識が醸成・強化される懸念がでるため、それらを取り除いていくことを配慮するものです。

第3項

男女が共に参画していくためには、男女が対等な立場で意見を言えるような環境整備が求められます。女性の社会参加は確実に進んでいますが、政策や方針の決定過程にいる女性の数は、まだまだ少ないのが現状です。行政や事業所、地域の市民団体において、企画立案の段階から男女が共に関わり、幅広い意見を出し合い、各種共同して参画していくことを目指します。

第4項

子の養育や家族の介護などの家事の多くを女性が担っているなかで、少子・高齢化が進展しているという現状があります。取手市においても少子・高齢化の受け皿つくりとして次世代育成支援策や高齢者福祉施策が進められています。男女が共に社会に参画していくためには、家族を構成する男女が、相互に協力しあうことが求められます。社会の支援を受けながら、家族の一員としての役割をはたし、家庭生活とその他の活動(働くこと、学校に通うこと、地域活動をすること)との両立が、図られるようにすることをめざします。男性にとっても、家庭生活や地域生活に目を向けることは、高齢期を含めた生活を充実したものとするため重要な課題です。

第5項

男女共同参画推進の取り組みは、国際社会の取り組み(女子差別撤廃条約の批准による法令整備、世界女性会議結果後の国内推進体制整備など)、と連動して進められてきました。そのなかで人種差別や外国人差別の解消のさらなる取り組みが求められています。取手市においては、在住外国人の増加や、情報通信技術の発達にともなう家庭・地域・職域・学校での相互の理解を深めることをめざします。

市の責務

第4条

  1. 市は、男女共同参画の推進を主要な施策と位置付け、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画の推進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施しなければならない。
  2. 市は、男女共同参画の推進に当たっては、国、他の地方公共団体、市民及び事業者と連携を図りつつ協力して取組むものとする。

趣旨

基本法第9条の「地方公共団体の責務」の規定を受けてのものです。積極的改善措置という手法を用いて、男女共同参画の推進の為の施策を実施し、市自らが率先的に取り組むことを規定しました。第5条市民、第6条事業者の規定と併せて、市を構成するすべての主体の責任と義務を規定しました。

解説

第1項

取手市において、総合的な施策を推進することを規定しており、具体的には第9条で規定する男女共同参画基本計画を中心とした施策を実施します。

第2項

男女共同参画の施策は行政のみでは推進できません。官民一体となって取り組みます。

市民の責務

第5条 市民は、基本理念にのっとり、家庭、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野において、自ら積極的に参画するとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

趣旨

基本法第10条の「国民の責務」を受けて、緩やかな責任と義務を市民に規定しました。市民自らが男女共同参画の推進の取り組みの提案、計画をし、その実施に対しては積極的に参画していくことや、市の施策への協力を求めるものです。

事業者の責務

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、男女が共同して参画することができる機会の確保と体制の整備に積極的に努めるとともに、市が実施する男女共同参画推進に関する施策に協力するよう努めなければならない

趣旨

基本法第10条の「国民の責務」を受けて、緩やかな責任と義務を事業者に規定しました。事業者自ら取り組むことと、市・市民などが行う施策への協力を求めるものです。

解説

男性も女性も社会のあらゆる分野での、責任を分かち合う男女共同参画社会は、家庭生活とその他の活動(仕事・地域活動等)の両立のための環境整備を求めています。ここでは、そのためには事業者の理解が不可欠であることから、事業者の自発的な取り組みと、市の施策への事業者の協力を求めたものです。

「機会の確保」とは、例えば、女性の方針の立案から決定の過程への場へ参画できるような取組みのことをいいます。

「体制の整備」とは、例えば、職場において本来個人の能力で役割の分担となるものが、男性が主要な業務、女性が補助的業務という性別を理由で決める等の意識(固定的な性別役割分担意識)の解消、家庭と子育て両立の支援策を取ることをいいます。

性別等による権利侵害の禁止

第7条

  1. 何人も、性別等を理由とする差別的取扱い及び人権の侵害を行ってはならない。
  2. 何人も、個人の尊厳を踏みにじるドメスティック・バイオレンスを行ってはならない。
  3. 何人も、あらゆる場において、セクシュアル・ハラスメントその他の性別等に係るハラスメントを行ってはならない。

趣旨

基本法第3条本条例第3条第1項をうけての規定です。「性別等」に基づく差別・性に起因する暴力は、男女共同参画社会の形成を阻害する要因であり、人権侵害の程度が深いものです。官民が一体となって取り組むことを規定しました。

解説

第1項

例えば「男は仕事・女は家庭」という性別役割分担に基づく男女のあり方は、「女は結婚したら仕事をやめるべきだ」という社会通念や慣習となり、結果的に男女の選択肢を狭めています。また、性的な要素を含んだ人権侵害には「性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為、ドメスティック・バイオレンス」などがあげられますが、いずれも被害者に恐怖と不安を与え、自信を失わせ、かつ社会活動を束縛する深刻な人権侵害です。令和4年に第1項中の「性別」という表現を「性別等(第2条第4項参照)」に改正し、性的マイノリティのかたを含めた権利侵害を禁止する表現としました。多様な性が受容され、全ての人が安心して暮らせる社会をめざします。

第2項

配偶者間・パートナー間におけるドメスティック・バイオレンス(身体的、性的、心理的、社会的又は、経済的な暴力)を禁止することを規定しました。

第3項

セクシュアル・ハラスメント(継続的な人間関係において優位な力関係を背景に相手の意識に反して行われる行為)は、雇用関係にある者の間だけでなく、例えば施設における職員とその利用者や学校や地域など、様々な生活の場で起こり得るものです。そのため、範囲をあらゆる場とし、禁止することを規定しました。また、「性別等」に係るハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント以外にも、マタニティ・ハラスメントなど新たな概念が生じていることから「その他の性別等に係るハラスメント」の禁止について、令和4年の条例改正の際に規定しました。

公衆に表示する情報に関する留意

第8条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担、セクシュアル・ハラスメント等性別等を理由とする偏見及び差別を助長し、又は連想させる表現及び過度の性的な表現を行わないよう努めなければならない。

趣旨

基本理念第3条第1項を受けての規定です。高度情報化社会の進展の影響は、さらに拡大することが予想されます。公衆に対して表示される情報は、一般市民に与える影響が大きく発信する側、受信する側が配慮しあうことをめざします。特に様々なメディアにおける性に対する情報(有害な図書やインターネット)等の氾濫や暴力の取り扱いは、青少年への有害な影響が懸念されています。

解説

公衆に表示する情報マスメディアは、男女共同参画を推進するうえで大きな意義がありますが、反面女性の性的側面の強調など、女性の人権に対する配慮に欠いた取り扱いをしないように表現の自由を尊重しながら、配慮と理解を求めていきます。
また公的機関の発行する広報・出版物(パンフレット・ポスター等)においても性別に基づく固定的な役割分担にならないような多様なイメージが社会に浸透していく表現になるような取り組みをめざします。憲法「表現の自由」に抵触しない範囲です。令和4年の条例改正において「性別等(第2条第4項参照)」を理由とした偏見や差別を助長・連想させる表現を行わないように規定しました。

「固定的な役割分担」とは…
出版物や広報の受け手が、男女双方に関わるにもかかわらず、例えば、

  1. 勤労者全ての対象とした制度に、男性をイメージした言葉やイラストの使用
  2. 男性がいつもリーダーなど、性別と立場・関係を結びつけた表現にしていないか
  3. 強者を男性、弱者を女性で描いたり、加害者は男性、被害者は女性などの表現をしようしていないか

などがあげられます。

このページは、以下のSDGsのゴールと関連しています。

SDG's目標5「ジェンダー平等を実現しよう」画像 SDG's目標10「人や国の不平等をなくそう」画像 SDG's目標16「平和と公正をすべての人に」画像

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