現在位置 ホーム > 市政情報 > 人権・男女共同参画 > 男女共同参画(条例と計画) > 取手市男女共同参画推進条例の解説
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日本国憲法は、個人の尊重と法の下の平等を定め、性別によって差別をしてはならないことをうたっている。これを踏まえ、取手市は、男女がお互いの人権を尊重し、認め合い、お互いに協力し合う(1)男女共同参画社会の実現に向けた基本計画を県内でもいち早く策定し、施策の推進に向けて様々な取組みをしてきた。特に、(2)子育て支援についての取り組みは、早くから推進してきたが、多様な生き方が可能になる社会の達成には、依然として解決すべき多くの課題が残されている。
取手市は、(3)首都圏近郊都市として、世帯数の増加傾向もみられるが、特に、核家族の割合が高いという特徴もあり、出産や子育てを期に仕事を断念する女性も少なくない。また、(4)男性の遠距離通勤・長時間労働等によって、(5)家事・育児・介護等の家庭生活への参画が充分にはできていない。(6)性別による固定的な役割分担意識やそれに基づく社会的慣行も根強く残っており、真の男女共同参画社会の実現には、なお一層の努力が求められる。
今後、(7)少子高齢化、国際化、情報社会の急速な進展により家庭・地域・社会が大きく変化していく中で、全ての市民が安心して暮らし、そして、取手市の地域の特性を生かした男女共同参画社会の実現に向け、全ての人が平等で生き生きと暮らすことができる活力ある取手を築くために、市、市民及び事業者が一体となった取組みを推進するためにこの条例を制定する。
前文は法律の規定ではないので、直接の法的効果はありませんが各条項の解釈の基準をしめすものです。条例の趣旨・目的・基本原則を明記することで、取手市民一人一人に基本理念の理解と、男女共同参画の推進の重要性の理解を求めるものです。
(憲法や基本法、基本条例に多くみられます)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関する基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって男女共同参画社会を実現することを目的とする。
男女共同参画社会を実現するために、行政のみならず市を構成するすべての主体が、どのように取り組んでいくべきか、という基本的な方針を示すことを、この条例の目的としています。
「施策の基本となる事項」とは、本条例第2章に規定する事項をさします。
「総合的・計画的に推進」とは、市においては、18条・第3章に規定する推進体制をさします。
「総合的」とは基本法に準じた施策が、市・市民・事業者が全体として促すことをいいます。「計画的」とは、基本計画の実施施策がその中心となる、ということです。
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
本条は、今まで一般的にあまり使われていなかった言葉や、重要で基本的な概念をあらわしている言葉の意味を説明しています。
第3条
本条例第1条(目的)の「基本理念を定め」の規定を受けてのものです。基本法第9条の、「地方公共団体は国の基本理念にのっとった施策の実施の責務」を受けての規定になります。
取手市の男女共同参画社会の形成のための基本理念を5つ定めました。これらの理念は、第4条から6条までの市・市民・事業者の責務を果たす上での基本となる考え方になります。
男女共同参画社会とは「男女が、そのお互いの人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、その個性と能力を充分に発揮できる社会」と規定しています。男女の人権の尊重は、男女共同参画社会の根底をなすものであり、人権の尊重をなくして男女が個性と能力を発揮していくことはできない、としています。取手市においても、同様の社会の取り組みをめざします。
現在の社会における制度や慣行の中には、男女を問わず、個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにもかかわらず、「男は仕事、女は家庭」「男は主要な業務、女は補助的業務」というように、性別による固定的な役割分担意識の下に形成されたものもあります。結果として、就労活動、地域活動の選択をしにくくするような偏った影響を与える恐れがあります。男女が多様な生き方を、選択できるよう配慮されることをめざします。
個人が何を「男らしさ・女らしさ」と考えるのかに関与するものではありませんが、「男らしさ・女らしさ」をパターン化し強調し過ぎることで、性別による固定的な役割分担意識が醸成・強化される懸念がでるため、それらを取り除いていくことを配慮するものです。
男女が共に参画していくためには、男女が対等な立場で意見を言えるような環境整備が求められます。女性の社会参加は確実に進んでいますが、政策や方針の決定過程にいる女性の数は、まだまだ少ないのが現状です。行政や事業所、地域の市民団体において、企画立案の段階から男女が共に関わり、幅広い意見を出し合い、各種共同して参画していくことを目指します。
子の養育や家族の介護などの家事の多くを女性が担っているなかで、少子・高齢化が進展しているという現状があります。取手市においても少子・高齢化の受け皿つくりとして次世代育成支援策や高齢者福祉施策が進められています。男女が共に社会に参画していくためには、家族を構成する男女が、相互に協力しあうことが求められます。社会の支援を受けながら、家族の一員としての役割をはたし、家庭生活とその他の活動(働くこと、学校に通うこと、地域活動をすること)との両立が、図られるようにすることをめざします。男性にとっても、家庭生活や地域生活に目を向けることは、高齢期を含めた生活を充実したものとするため重要な課題です。
男女共同参画推進の取り組みは、国際社会の取り組み(女子差別撤廃条約の批准による法令整備、世界女性会議結果後の国内推進体制整備など)、と連動して進められてきました。そのなかで人種差別や外国人差別の解消のさらなる取り組みが求められています。取手市においては、在住外国人の増加や、情報通信技術の発達にともなう家庭・地域・職域・学校での相互の理解を深めることをめざします。
第4条
基本法第9条の「地方公共団体の責務」の規定を受けてのものです。積極的改善措置という手法を用いて、男女共同参画の推進の為の施策を実施し、市自らが率先的に取り組むことを規定しました。第5条市民、第6条事業者の規定と併せて、市を構成するすべての主体の責任と義務を規定しました。
取手市において、総合的な施策を推進することを規定しており、具体的には第9条で規定する男女共同参画基本計画を中心とした施策を実施します。
男女共同参画の施策は行政のみでは推進できません。官民一体となって取り組みます。
第5条 市民は、基本理念にのっとり、家庭、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野において、自ら積極的に参画するとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。
基本法第10条の「国民の責務」を受けて、緩やかな責任と義務を市民に規定しました。市民自らが男女共同参画の推進の取り組みの提案、計画をし、その実施に対しては積極的に参画していくことや、市の施策への協力を求めるものです。
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、男女が共同して参画することができる機会の確保と体制の整備に積極的に努めるとともに、市が実施する男女共同参画推進に関する施策に協力するよう努めなければならない
基本法第10条の「国民の責務」を受けて、緩やかな責任と義務を事業者に規定しました。事業者自ら取り組むことと、市・市民などが行う施策への協力を求めるものです。
男性も女性も社会のあらゆる分野での、責任を分かち合う男女共同参画社会は、家庭生活とその他の活動(仕事・地域活動等)の両立のための環境整備を求めています。ここでは、そのためには事業者の理解が不可欠であることから、事業者の自発的な取り組みと、市の施策への事業者の協力を求めたものです。
「機会の確保」とは、例えば、女性の方針の立案から決定の過程への場へ参画できるような取組みのことをいいます。
「体制の整備」とは、例えば、職場において本来個人の能力で役割の分担となるものが、男性が主要な業務、女性が補助的業務という性別を理由で決める等の意識(固定的な性別役割分担意識)の解消、家庭と子育て両立の支援策を取ることをいいます。
第7条
基本法第3条本条例第3条第1項をうけての規定です。「性別等」に基づく差別・性に起因する暴力は、男女共同参画社会の形成を阻害する要因であり、人権侵害の程度が深いものです。官民が一体となって取り組むことを規定しました。
例えば「男は仕事・女は家庭」という性別役割分担に基づく男女のあり方は、「女は結婚したら仕事をやめるべきだ」という社会通念や慣習となり、結果的に男女の選択肢を狭めています。また、性的な要素を含んだ人権侵害には「性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為、ドメスティック・バイオレンス」などがあげられますが、いずれも被害者に恐怖と不安を与え、自信を失わせ、かつ社会活動を束縛する深刻な人権侵害です。令和4年に第1項中の「性別」という表現を「性別等(第2条第4項参照)」に改正し、性的マイノリティのかたを含めた権利侵害を禁止する表現としました。多様な性が受容され、全ての人が安心して暮らせる社会をめざします。
配偶者間・パートナー間におけるドメスティック・バイオレンス(身体的、性的、心理的、社会的又は、経済的な暴力)を禁止することを規定しました。
セクシュアル・ハラスメント(継続的な人間関係において優位な力関係を背景に相手の意識に反して行われる行為)は、雇用関係にある者の間だけでなく、例えば施設における職員とその利用者や学校や地域など、様々な生活の場で起こり得るものです。そのため、範囲をあらゆる場とし、禁止することを規定しました。また、「性別等」に係るハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント以外にも、マタニティ・ハラスメントなど新たな概念が生じていることから「その他の性別等に係るハラスメント」の禁止について、令和4年の条例改正の際に規定しました。
第8条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担、セクシュアル・ハラスメント等性別等を理由とする偏見及び差別を助長し、又は連想させる表現及び過度の性的な表現を行わないよう努めなければならない。
基本理念第3条第1項を受けての規定です。高度情報化社会の進展の影響は、さらに拡大することが予想されます。公衆に対して表示される情報は、一般市民に与える影響が大きく発信する側、受信する側が配慮しあうことをめざします。特に様々なメディアにおける性に対する情報(有害な図書やインターネット)等の氾濫や暴力の取り扱いは、青少年への有害な影響が懸念されています。
公衆に表示する情報マスメディアは、男女共同参画を推進するうえで大きな意義がありますが、反面女性の性的側面の強調など、女性の人権に対する配慮に欠いた取り扱いをしないように表現の自由を尊重しながら、配慮と理解を求めていきます。
また公的機関の発行する広報・出版物(パンフレット・ポスター等)においても性別に基づく固定的な役割分担にならないような多様なイメージが社会に浸透していく表現になるような取り組みをめざします。憲法「表現の自由」に抵触しない範囲です。令和4年の条例改正において「性別等(第2条第4項参照)」を理由とした偏見や差別を助長・連想させる表現を行わないように規定しました。
「固定的な役割分担」とは…
出版物や広報の受け手が、男女双方に関わるにもかかわらず、例えば、
などがあげられます。