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NPO法人格取得のメリットと負うべき責任
平成10年に「特定非営利活動促進法」(通称NPO法)が成立し、ボランティア団体は法人格を取得することが可能となりました。NPO法人格を取得することで、法人としてさまざまな契約行為や取引を行えるようになり、構成員個人の負担が軽減されるほか、団体としての社会的信用が向上するというメリットがあります。一方で、NPO法に基づき適切な管理や運営を行うためには、さまざまな事務手続きが継続的に必要となるほか、場合によっては納税の義務が発生することもあります。そのため、法人格の取得を検討する際には、以下のメリットと負うべき責任を十分に考慮することが重要です。
1.NPO法人格取得のメリット
(1)信用性、信頼性の向上
- NPO法人格は、社会的に広く認知されている法人格であるため、活動や組織に対する信用性や信頼性が向上します。
- 公益性のある社会活動の一翼を担うことが可能となります。(さまざまな公益事業への参加や、補助金・助成金の申請にあたって、法人格が条件となるケースがあります。)
(2)メンバー個人と団体の役割・責務の明確化
- NPO法人格を取得することで、法律行為の主体として法人名で財産の取得や不動産の登記などが可能となります。
- 法人としての債務や責任と、会員個人の債務や責任が明確に区分されます。ただし、債務の連帯保証をしている場合や、法律違反を犯した場合などは例外となります。
(3)活動の継続性・安定性・組織力の向上
- NPO法人格を持つことで、代表者が変更になった場合でも、法人として保有している財産や活動はそのまま継続されます。一方、任意団体の場合、代表者が亡くなった際には、団体の保有財産が代表者の遺族に相続される可能性があります。
- 法人として事務や事業の担い手として職員を雇用することで、ボランティアだけに頼らない組織的な活動が可能となり、活動の安定性や継続性が向上します。さらに、新たな雇用の受け皿として社会的役割を果たすこともできます。
(4)その他
- 一定の条件を満たした上で申請を行うことで、認定NPO法人としての法人格を取得することが可能です。認定NPO法人となることで、寄付金に対する税額控除をはじめとした、さまざまな税制上の優遇措置を受けることが可能となります。
2.NPO法人格取得により負うべき責任
(1)厳正な運営
- NPO法人は、NPO法および法人の定款に基づいた適正な運営が求められます。そのため、活動内容を変更したり、新たな活動を開始したりする場合には、総会の開催や定款変更などの手続きが必要となり、これらには一定の時間がかかることがあります。
(2)厳正な事務処理と情報公開が必要
- NPO法人は、毎事業年度ごとに事業報告書や決算書類などを作成する義務があります。特に、決算書類の作成には、複式簿記の知識が必要になります。
(注意)所轄庁では、これらの書類作成の支援は行っていないため、自身で作成するか、税理士や会計士などの専門家に依頼する必要があります。
- 事業報告書や決算書類などは、毎事業年度終了後3か月以内に所轄庁へ提出し、併せて公開する義務があります。所轄庁に提出された書類は、一般市民が閲覧できるように公開します。さらに、法人自身も事務所などに備え付け、関係人がいつでも閲覧できる状態にしておく必要があります。また、決算書類のうちの貸借対照表については、毎年公告する義務があります。
- 最長でも2年に1回は役員の変更(重任可)が必要であり、それに伴い所轄庁への届け出や法務局への変更登記などが必要となります。
- 法人の登記事項証明書(法人登記簿)は、関係者に限らずだれでも取得可能です。そのため、法人の代表権を持つ歴代役員の氏名や住所が公にされることになります。
(3)納税の義務の明確化
- 特定非営利活動を行う場合でも、法人税法施行令第5条で規定される収益事業34業種(例:物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業など)に該当する場合は、収益に対して法人税の納税義務が発生します。
(注意)詳細は、以下のページで解説しています。
NPO法人と収益事業
- 法人として法人市民税の納税義務が発生します。ただし、収益事業を行っていない場合は、申請により減免・免除される場合があります。
- 物品の販売や対価を得て行うサービスの提供で得られる売上が年間1,000万円を超える場合などは、消費税の納税義務が発生します。詳細については税務署にお問い合わせください。
(4)罰則などの規定がある
罰金
以下の場合、役員(理事、監事)は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
- 正当な理由なく所轄庁の改善命令に違反し、改善命令に係る措置を取らなかった場合
過料
以下の場合、役員(理事、監事、または清算人)は20万円以下の過料が科される可能性があります。
- 所轄庁からの報告徴取指示に対して報告をせず、または虚偽の報告をした場合
- 所轄庁の立ち入り検査を拒否、妨害、または忌避した場合
- 事業報告書を毎事業年度終了後3か月以内に所轄庁へ提出しなかった場合
- 過去5か年分の事業報告書を事務所に備え置かず、記載すべき事項を記載しなかった場合、または不実の記載をした場合
- 役員名簿および定款を事務所に備え置かず、記載すべき事項を記載しなかった場合、または不実の記載をした場合
- 組合等登記令に違反して法務局への登記(設立、変更など)手続きをしなかった場合
- 財産目録を事務所に備え置かず、記載すべき事項を記載しなかった場合、または不実の記載をした場合
- 役員変更の届け出をしなかった場合、または虚偽の届け出をした場合
- 定款変更(認証不要のもの)の届け出をしなかった場合、または虚偽の届け出をした場合
- 定款変更(認証が必要なもの)の認証後、変更登記をしたことを証する登記事項証明書を提出しなかった場合
- 合併の認証後、2週間以内に貸借対照表および財産目録を作成せず、記載すべき事項を記載しなかった場合、または不実の記載をした場合
- 合併の認証後、2週間以内に債権者に対して合併に異議を述べるべきことを公告せず、かつ個別に判明している債権者にこれを催告しなかった場合
- 合併に異議が述べられた場合に、弁済、担保の供出、またはその債権者に弁済を受けさせることを目的とした財産信託を行わなかった場合
- 債務完済の見込みがない場合に、破産開始手続きの申立てをしなかった場合
- 清算中に債務完済の見込みがない場合に、その旨の公告をしなかった場合、または不正の公告をした場合
- 解散時に債権者に債権の申し出の催告公告をしなかった場合、または不正の公告をした場合
以下の場合、行為を行った者は10万円以下の過料が科される可能性があります。
- 特定非営利活動法人以外の者が、その名称中に「特定非営利活動法人」またはこれに紛らわしい名称を使用した場合
法人の認証の取り消し
以下の場合、NPO法人の認証を取り消される可能性があります。
- 法人設立の認証から6か月を経過しても未登記の場合
- 事業報告書の提出が3年以上にわたって未提出の場合
- 正当な理由なく所轄庁の改善命令に従わなかった場合
- 法令に違反しており、改善命令ではその改善が期待できないことが明らかな場合
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